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Blood誌に石尾崇先生の成人T細胞性白血病リンパに対する治療標的スクリーニング論文が掲載されました。

リンパ腫グループ(Principal Investigator: 中川雅夫助教)から石尾崇先生の論文 "Genome-wide CRISPR screen identifies CDK6 as a therapeutic target in Adult T-cell leukemia/lymphoma"(CRISPRスクリーニングでATLLの新規治療分子標的となるCDK6を同定)が20211124()公開のBlood(Impact factor: 23.629)にオンライン掲載されました。以下にその概要を記します。 ATLL(成人T細胞性白血病リンパ腫)はhuman T-cell leukemia virus type 1(HTLV-1)感染者の一部に生じる悪性リンパ腫で,HTLV-1CD4陽性T細胞へ感染しキャリア*1として50年程度の長い潜伏期間を経過した後に発症します。既存の化学療法に対する反応性が乏しい予後不良の疾患で,ATLLの増殖および生存に重要な役割を担っている遺伝子を標的とした新規治療方法の開発が求められています。  今回の研究では,新規ゲノム*2編集技術であるCRISPR-Cas9を用いてATLL細胞株内の約20000種類の遺伝子を網羅的にノックアウトさせ,どの遺伝子が最もATLLの増殖および生存に重要な役割を担っているのかを機能的にスクリーニングしました。このスクリーニングにより細胞周期機構に関わるCyclin dependent kinase 6(CDK6)と細胞増殖に関わるmTORC1経路がATLLの増殖と生存に必須の遺伝子であることを見出しました。  この結果を踏まえて,本研究グループはCDK4/6阻害薬(パルボシクリブ)がATLLの細胞周期進行を抑制し,アポトーシスを伴う細胞毒性をもたらすことを細胞株およびマウスモデルを用いて示しました。さらに,比較的CDK4/6阻害薬への反応性が弱いTP53異常を有するATLLに対してもmTORC1阻害薬(エベロリムス)を併用することで相乗効果による細胞毒性をもたらすことも突き止めました。パルボシクリブとエベロリムスの併用投与は他の悪性腫瘍にも奏功をもたらす可能性があり,今後の臨床応用が期待されます。

 

【用語解説】

1 キャリア ... 病原性のあるウイルスを体内に保持していながら症状を呈さない状態

2 ゲノム ... DNAの文字列に表された遺伝情報の全体

 

>>論文の詳細はこちら   DOI 10.1182/blood.2021012734

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