Blood誌に千葉雅尋先生のT細胞悪性リンパ腫に対するNK細胞免疫の感受性を規定する遺伝子を同定した論文が掲載されました
リンパ腫グループ(Principal Investigator: 中川雅夫特任准教授)から千葉雅尋先生の論文 "Genome-wide CRISPR screens identify CD48 defining susceptibility to NK cytotoxicity in peripheral T-cell lymphomas"(CRISPRスクリーニングでT細胞性の悪性リンパ腫のNK細胞傷害を規定する遺伝子としてCD48を同定)が2022年8月3日(水)公開のBlood誌(Impact factor:25.476)にオンライン掲載されました。以下にその概要を記します。
ATLLはhuman T-cell leukemia virus type 1(HTLV1)感染者の一部に生じる、日本人での発症頻度が比較的高いT細胞性の悪性リンパ腫です。ATLLは既存の治療に対する反応性が乏しい難治性の疾患で、新しい視点からの治療法の開発が求められています。
今回の研究では、新規ゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9(*1)を用いてATLL細胞株内の約20,000種類の遺伝子を網羅的にノックアウトさせ、どの遺伝子が最もATLLのNK細胞免疫に重要な役割を担っているかを機能的にスクリーニングしました。その結果、ATLL細胞の表面に発現するCD48がNK細胞からの攻撃に対する感受性に重要な役割を果たしていることを見出しました。さらにATLL細胞では正常なリンパ球と比較してCD48の発現が低下していることを発見しました。これらの結果からATLL細胞は自身のCD48の発現を低下させることで、NK細胞からの免疫を回避し、悪性腫瘍の形質を獲得していると考えられました。さらにATLL以外のT細胞性の悪性リンパ腫においても、正常なリンパ球と比較してCD48の発現量が低下しており、予後との関連も示すことができました。このことから、ATLLを含めたT細胞性の悪性リンパ腫症例において、CD48の発現量がNK細胞免疫からの逃避に重要な役割を担っていると考えられます。T細胞性の悪性リンパ腫のCD48発現が免疫療法の治療効果予測に繋がることが期待されます。
【用語解説】
*1 CRISPR-Cas9 ... DNA の二本鎖を切断することで、ゲノム配列の任意の遺伝子を欠損、挿入する遺伝子改変技術のこと
>>論文の詳細はこちらhttps://doi.org/10.1182/blood.2022015646
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