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Leukemia誌に須藤啓斗先生のT細胞性リンパ腫細胞におけるブレンツキシマブベドチン感受性の分子機序を解明した論文が掲載されました。

リンパ腫グループ(Principal Investigator: 中川雅夫助教)から須藤啓斗先生の論文 " Genome-wide CRISPR screen identifies MAD2L1BP and ANAPC15 as targets for brentuximab vedotin sensitivity in CD30+ peripheral T-cell lymphoma"(全ゲノムCRISPRスクリーニングによるCD30陽性末梢性T細胞性リンパ腫におけるブレンツキシマブベドチン感受性遺伝子MAD2L1BP/ANAPC15の同定)が2024年10月21日(月)公開のLeukemia誌(Impact factor:12.8)にオンライン掲載されました。以下にその概要を記します。

末梢性T細胞性リンパ腫(PTCL: peripheral T-cell lymphoma)は成熟T細胞に由来する悪性リンパ腫で、悪性リンパ腫全体の約7%を占める希少疾患です。PTCLは一部の病型を除き既存の治療に対する反応性が乏しく、新しい治療法の開発が求められています。PTCLではCD30*1が高率に陽性であり、同分子を標的とした抗体薬物複合体のブレンツキシマブベドチン(BV)が広く使われていますが、奏効率は十分ではなく、BVへの抵抗性の克服が予後の改善につながります。
今回の研究では、新規ゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9*2を用いてCD30陽性PTCL細胞株内の約20,000種類の遺伝子を網羅的にノックアウトさせ、どの遺伝子がBVへの感受性に関与するかをスクリーニングしました。これにより、有糸分裂チェックポイント複合体(MCC)*3の阻害因子として知られる、MAD2L1 binding protein(MAD2L1BP)とanaphase promoting complex subunit 15(ANAPC15)がBVへの感受性亢進に関わることを見出しました。  
これを踏まえ、研究グループはMAD2L1BPをノックアウトすることでBVの抗腫瘍効果が増強することを細胞株及びマウスモデルを用いて解明しました。さらに、BVとAPC/C*4阻害薬のproTAMEを併用することで細胞周期の停止を誘導し、相乗的な細胞傷害作用を示すことも見出しました。   
今回の結果から、MCC-APC/Cを軸とした新規治療標的がBVの抵抗性克服に重要である可能性が示され、今後の臨床応用が期待されます。 

【用語解説】
*1 CD30 … TNFレセプタースーパーファミリーに属する膜結合型糖タンパク質。
*2 CRISPR-Cas9 … DNAの二本鎖を切断することで、ゲノム配列の任意の遺伝子を欠損、挿入する遺伝子改変技術のこと。
*3 有糸分裂チェックポイント複合体(MCC) … MAD2、BubR1、Bub3、及びCdc20で形成される複合体のこと。有糸分裂の際、APC/Cに対して抑制的に機能する。
*4 APC/C(Anaphase Promoting Complex/Cyclosome) … 細胞周期後期への移行を促進するE3リガーゼのこと。

>>論文の詳細はこちら https://www.nature.com/articles/s41375-024-02441-1

>>北海道大学のプレスリリースは
Webサイト(https://www.hokudai.ac.jp/news/2024/12/tbvapcc.html
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